Column vol.2

地域の梅文化をひもとく!

和歌山梅酒を知るキーワード

梅文化が根付く和歌山を、キーワードでひもといていこう。梅酒のラベルに書かれた情報がさらに理解できるはず。

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#みなべ町
#田辺市

和歌山県のほぼ中央に位置するみなべ町と田辺市は、県内の収穫量の約83%を占める梅の産地。この地域で梅栽培が始まったのは江戸時代初期。山間部で米が育ちにくい痩せた土地だったことから、紀州田辺藩主が痩せ地でも育つ梅栽培を奨励。明治時代には内中源蔵という人物が梅林を広げ、梅干工場をつくったことから梅栽培と梅干加工が盛んになった。そして現在では特産の梅を生かし、梅干メーカーや梅農家が梅酒を製造している。


また、海南市など県北部にも梅酒生産者は点在。古くから日本酒の蔵が集まるエリアで、清酒製造の閑散期が梅の収穫時期に当たることから、醸造技術を生かして梅酒を製造するようになったといわれている。


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#南高梅

みなべ町で誕生した、和歌山を代表する梅の最高級品種「南高梅」。大粒で皮は薄く、実は肉厚でやわらかいことが特徴。日光がよく当たる部分が赤く色付くことから、美しい紅色に染まった梅は「紅南高」と呼ばれて珍重されている。また、南高梅に続く人気品種は青いダイヤと呼ばれる「古城梅」。果肉が厚く、種が小さいのが特徴だ。ウメとニホンスモモをかけ合わせた、真っ赤な果肉の新品種「露つゆあかね茜」も注目を集めている。


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紀州梅の代表的な品種:南高梅(なんこううめ)、古城梅(こじろうめ)

「南高梅」の名前は高校が由来だった?

みなべ町ではさまざまな梅の品種が栽培されていたが、優良な品種を選んで統一することに。5年間の調査を経て、最も風土に適した最優秀品種に選ばれたのが農家・ 高田貞楠さんが育てた「高田梅」。この梅について南部高等学校園芸科の生徒が調査に尽力したため、 校名の略称「なんこう」とともに、「南部川村の高田梅」の意味も含めて「南高梅」と命名された。


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#完熟梅

梅酒づくりに使う梅といえば、青梅を連想する人も多いだろう。一般的に全国のスーパーなどに流通する南高梅の大半は、青梅や樹上の完熟梅を手で収穫したものが多い。しかし和歌山県内では梅の園地にネットを敷き、熟れて自然落下した梅の実を収穫して梅酒に使う生産者もいる。完熟梅は芳醇な香りだが日持ちしないため、すぐに梅酒の加工に入れる産地ならではの味といえる。


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黄色くなるまで熟した大きな完熟梅。

#GI和歌山梅酒

GIとはGeographical Indicationの略で地理的表示という意味。酒類が正しい産地でつくられ、一定基準を満たした品質であることを示す制度だ。全国では24のGIが指定され(2023年6月時点)、「和歌山梅酒」は2020年に指定。原料に和歌山県内で収穫された新鮮な青梅・完熟梅のみを用いるなど多くの基準が設けられ、定期的に品質検査が行われる。梅酒の中でもGI和歌山梅酒認証ロゴマークが貼られた商品は基準を満たした証し。


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#梅の収穫量日本一

梅王国とも呼ばれる和歌山。その理由は県南部は年間を通して気温差が小さく温暖で、水はけの良い土壌に恵まれているため梅栽培に適しているから。2022年に和歌山県で収穫された梅の量は6万4400トン。前年より3100トン減ったものの、58年連続で日本一だ。都道府県別の2位は群馬県(3680トン)、3位は山梨県(1710トン)で大きく差をつけている。(農林水産省・農林水産統計「令和4年産うめの結果樹面積、収穫量及び出荷量」より)


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#うめ課

みなべ町役場に存在する、日本唯一の部署「うめ課」。1973年4月に旧南部川村で梅振興のために開設された後、合併したみなべ町に引き継がれて今年で50周年を迎えた。梅にまつわるイベントに参加したり、梅を使ったレシピ本を制作したりと、国内外に向けて梅の情報を発信。みなべ町の観光PRも行っている。現在うめ課の職員は7人。


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うめ課の平さん(左)と前田さん。

#世界農業遺産

伝統的な農業システムを認定する世界農業遺産に、2015年「みなべ・田辺の梅システム」が選ばれた。みなべ・田辺地域では養分の乏しい山の斜面に紀州備長炭をつくるための薪炭林(しんたんりん)を残して梅林を配置することで土砂崩れを防ぎ、水や栄養を行き渡らせて梅を育てる。またニホンミツバチを梅の受粉に利用するなど、400年にわたって高品質な梅を持続的に生産してきたことが評価された。


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#紀州みなべ梅酒特区

本来、酒類製造免許を取得するには年間6000Lの生産が義務付けられているが、構造改革特別区域(特区)では特例措置が認められている。2008年、みなべ町は「紀州みなべ梅酒特区」に認定。みなべ町内で生産された梅を原料として梅酒を町内で製造した場合、最低製造数量基準が年間1000Lに引き下げられた。これによって少量生産の事業者も酒類製造免許取得が可能になり、梅酒の生産が広がるきっかけになった。


梅システム

Credit:イラスト/ナカオテッペイ 文/越智理絵 資料提供/みなべ町うめ課


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